2026/09/18 09:00

『呪術廻戦』に登場する両面宿儺(りょうめんすくな)。作品では「呪いの王」として知られ、主人公・虎杖悠仁とも深く関わる存在です。
実は「宿儺」という名前は『呪術廻戦』だけの創作ではありません。『日本書紀』には、飛騨国にいた「宿儺」についての記述があります。
ただし、『日本書紀』に名前や姿が記されていることと、現代の歴史学上、その人物の実在が証明されていることは同じではありません。
さらに興味深いのは、『日本書紀』では朝廷に従わず討伐される存在として描かれる一方、飛騨地方では武勇に優れ、人々を守った英雄や地域の守護者として語り継がれていることです。
この記事では、『呪術廻戦』の両面宿儺と虎杖悠仁の関係から、『日本書紀』に記された宿儺、飛騨に残る伝説、そして「元ネタ」といわれる理由まで、作品設定・古典・地域伝承を分けながら紹介します。
目次
・『呪術廻戦』の両面宿儺とは?虎杖悠仁との関係
・両面宿儺は実在した?日本書紀に残る宿儺の記述
・日本書紀と飛騨で両面宿儺の姿が違うのはなぜ?
・飛騨に残る両面宿儺の伝説とゆかりの場所
・『呪術廻戦』の両面宿儺の元ネタは日本書紀?
・まとめ
『呪術廻戦』の両面宿儺とは?虎杖悠仁との関係
『呪術廻戦』における両面宿儺は、千年以上前に生存していたとされる「呪いの王」です。
ここで注意したいのは、この「千年以上前に生存していた」という説明は、あくまで『呪術廻戦』という作品内の設定だということです。歴史・伝承上の宿儺が、そのまま作品に登場しているわけではありません。
両面宿儺の読み方は「りょうめんすくな」
「両面宿儺」は「りょうめんすくな」と読みます。
初めて名前を見た人にとっては読み方の難しい言葉ですが、作品以前から日本の古典や飛騨地方の伝承と結びついて語られてきました。
『日本書紀』の本文では、飛騨国に「宿儺」という人物がいたと記され、その人物は一つの体に二つの顔を持つ姿として描かれています。現在では、この古典上の存在も一般に「両面宿儺」として紹介されています。
『呪術廻戦』では「呪いの王」として登場
TVアニメ『呪術廻戦』公式サイトでは、両面宿儺は千年以上前に生存し、死後も現世を脅かす「呪いの王」として紹介されています。
また、宿儺の指は物語の重要な要素となっています。
ここで描かれる宿儺は、あくまで『呪術廻戦』の世界のキャラクターです。後ほど紹介する『日本書紀』や飛騨地方の伝承上の宿儺とは、分けて考える必要があります。
虎杖悠仁と両面宿儺はどんな関係?
主人公の虎杖悠仁(いたどりゆうじ)は、両面宿儺の指を取り込んだことによって、宿儺をその身に宿すことになります。
TVアニメ公式サイトでも、虎杖は宿儺の猛毒に耐えられる非常に稀な存在として紹介され、両面宿儺についても、指を取り込んだ虎杖の体に受肉したと説明されています。
そのため、『呪術廻戦』を知るうえで虎杖悠仁と両面宿儺の関係は欠かせません。
『呪術廻戦』では、キャラクターだけでなく、作品を彩る日本語にも興味深い言葉が登場します。第1期オープニングテーマについては、「アニメ『呪術廻戦』の主題歌『廻廻奇譚』に出てきた四字熟語の魅力」でも紹介しています。
作品の宿儺と歴史・伝承上の宿儺は同じ存在?
結論からいえば、同じものとして扱うべきではありません。
『呪術廻戦』の両面宿儺はフィクション作品のキャラクターです。一方、『日本書紀』には飛騨国の「宿儺」が登場し、飛騨地方にも両面宿儺にまつわる伝承が残されています。
同じ名前や共通するイメージがあるため両者を比較したくなりますが、
・『呪術廻戦』の作品設定
・『日本書紀』に記された内容
・飛騨地方に残る地域伝承
は分けて見ていくことが大切です。
両面宿儺は実在した?日本書紀に残る宿儺の記述

実は「宿儺」という名前は『呪術廻戦』だけの創作ではありません。『日本書紀』には、飛騨国にいた「宿儺」についての記述があります。
ただし、『日本書紀』に名前や姿が記されていることと、現代の歴史学上、その人物の実在が証明されていることは同じではありません。
さらに興味深いのは、『日本書紀』では朝廷に従わず討伐される存在として描かれる一方、飛騨地方では武勇に優れ、人々を守った英雄や地域の守護者として語り継がれていることです。
この記事では、『呪術廻戦』の両面宿儺と虎杖悠仁の関係から、『日本書紀』に記された宿儺、飛騨に残る伝説、そして「元ネタ」といわれる理由まで、作品設定・古典・地域伝承を分けながら紹介します。
目次
・『呪術廻戦』の両面宿儺とは?虎杖悠仁との関係
・両面宿儺は実在した?日本書紀に残る宿儺の記述
・日本書紀と飛騨で両面宿儺の姿が違うのはなぜ?
・飛騨に残る両面宿儺の伝説とゆかりの場所
・『呪術廻戦』の両面宿儺の元ネタは日本書紀?
・まとめ
『呪術廻戦』の両面宿儺とは?虎杖悠仁との関係
『呪術廻戦』における両面宿儺は、千年以上前に生存していたとされる「呪いの王」です。
ここで注意したいのは、この「千年以上前に生存していた」という説明は、あくまで『呪術廻戦』という作品内の設定だということです。歴史・伝承上の宿儺が、そのまま作品に登場しているわけではありません。
両面宿儺の読み方は「りょうめんすくな」
「両面宿儺」は「りょうめんすくな」と読みます。
初めて名前を見た人にとっては読み方の難しい言葉ですが、作品以前から日本の古典や飛騨地方の伝承と結びついて語られてきました。
『日本書紀』の本文では、飛騨国に「宿儺」という人物がいたと記され、その人物は一つの体に二つの顔を持つ姿として描かれています。現在では、この古典上の存在も一般に「両面宿儺」として紹介されています。
『呪術廻戦』では「呪いの王」として登場
TVアニメ『呪術廻戦』公式サイトでは、両面宿儺は千年以上前に生存し、死後も現世を脅かす「呪いの王」として紹介されています。
また、宿儺の指は物語の重要な要素となっています。
ここで描かれる宿儺は、あくまで『呪術廻戦』の世界のキャラクターです。後ほど紹介する『日本書紀』や飛騨地方の伝承上の宿儺とは、分けて考える必要があります。
虎杖悠仁と両面宿儺はどんな関係?
主人公の虎杖悠仁(いたどりゆうじ)は、両面宿儺の指を取り込んだことによって、宿儺をその身に宿すことになります。
TVアニメ公式サイトでも、虎杖は宿儺の猛毒に耐えられる非常に稀な存在として紹介され、両面宿儺についても、指を取り込んだ虎杖の体に受肉したと説明されています。
そのため、『呪術廻戦』を知るうえで虎杖悠仁と両面宿儺の関係は欠かせません。
『呪術廻戦』では、キャラクターだけでなく、作品を彩る日本語にも興味深い言葉が登場します。第1期オープニングテーマについては、「アニメ『呪術廻戦』の主題歌『廻廻奇譚』に出てきた四字熟語の魅力」でも紹介しています。
作品の宿儺と歴史・伝承上の宿儺は同じ存在?
結論からいえば、同じものとして扱うべきではありません。
『呪術廻戦』の両面宿儺はフィクション作品のキャラクターです。一方、『日本書紀』には飛騨国の「宿儺」が登場し、飛騨地方にも両面宿儺にまつわる伝承が残されています。
同じ名前や共通するイメージがあるため両者を比較したくなりますが、
・『呪術廻戦』の作品設定
・『日本書紀』に記された内容
・飛騨地方に残る地域伝承
は分けて見ていくことが大切です。
両面宿儺は実在した?日本書紀に残る宿儺の記述

両面宿儺について調べると、「実在した」という説明を目にすることがあります。
確かに『日本書紀』には、飛騨国に「宿儺」という人物がいたという記述があります。しかし、古典に名前があることだけで、現代の歴史学上、その人物の実在が証明されたと断定することはできません。
「古典に記録されていること」と「歴史的実在が確認されていること」を分けるのが重要です。
『日本書紀』仁徳天皇65年条に登場する宿儺
高山市図書館のレファレンス事例では、『日本書紀』の仁徳天皇65年条に、飛騨国に「宿儺」という人物がいたとする記述が確認されています。
『日本書紀』は720年に完成したとされる歴史書で、日本の古代史を考えるうえで重要な史料です。
その中に宿儺の記述が存在することは確認できますが、記述された内容のすべてを、そのまま現代的な意味での人物記録として受け取れるとは限りません。
一つの体に二つの顔、四本ずつの手足
『日本書紀』に記された宿儺の姿は非常に特徴的です。
一つの体に二つの顔があり、それぞれが反対方向を向き、手足もそれぞれ四本あったとする趣旨の記述があります。力が強く動きも敏捷で、剣を帯び、複数の手で弓矢を扱ったとも記されています。
現在「両面宿儺」と呼ばれる大きな理由が、この二つの顔を持つ異形の姿です。
もちろん、ここから「実際に二つの顔と四本ずつの手足を持った人間が存在した」と結論づけることはできません。
この異形の姿が何を意味しているのかは、今回確認した資料だけから断定することはできません。
なぜ朝廷から討伐された?
『日本書紀』では、宿儺は皇命に従わず、人々から略奪を行う存在として描かれています。
そのため、朝廷側から難波根子武振熊(なにわのねこたけふるくま)が派遣され、宿儺を討ったという流れになっています。
つまり『日本書紀』だけを読めば、宿儺は朝廷に背き、人々を苦しめる討伐対象です。
しかし、宿儺がいたとされる飛騨地方には、『日本書紀』から受ける印象とは大きく異なる伝承が残っています。
日本書紀に名前があることと実在証明は同じではない
「両面宿儺は実在したのか」という疑問について、現在確認できる範囲を整理すると、『日本書紀』に宿儺の記述があることは確認できます。
また、飛騨地方では宿儺にまつわる伝承や信仰が受け継がれてきました。
一方で、作品に登場するような両面宿儺や、『日本書紀』に描かれた異形の人物が、その姿のまま歴史上実在したと確認されているわけではありません。
したがって、「実在した」と一言で断定するよりも、「『日本書紀』に記述があり、飛騨地方では実在した人物・英雄として伝えられている」と整理する方が慎重です。
日本書紀と飛騨で両面宿儺の姿が違うのはなぜ?

両面宿儺の伝説で特に興味深いのが、『日本書紀』と飛騨地方で宿儺の人物像が大きく異なることです。
『日本書紀』では討伐される側ですが、飛騨では英雄や守護者として語られています。
日本書紀では朝廷に逆らう存在
『日本書紀』での宿儺は、皇命に従わず、朝廷から派遣された武人に討たれる存在です。
一方、飛騨高山の公式観光情報では、日本書紀と地域伝承で宿儺像が異なる背景について、日本書紀が「支配者側の視点」で書かれたことに起因すると考えられる、と紹介しています。
ただし、これは宿儺をめぐる見方の一つとして捉える必要があります。「日本書紀の記述は誤りで、飛騨の伝承だけが真実」と断定できるものではありません。
飛騨では英雄・地域の守護者として伝わる
一方、飛騨地方では両面宿儺は武勇に優れ、神祭を司り、農耕を指導し、地域を守った英雄だったと伝えられています。
飛騨高山の公式観光情報でも、宿儺は地域の守護者として語り継がれてきた存在として紹介されています。
日本書紀では「討たれる者」、飛騨では「人々を守る者」。
同じ宿儺をめぐって、このように正反対ともいえる人物像が伝わっていることが、両面宿儺伝説の大きな特徴です。
一つの人物・存在について、古典と地域伝承で異なる姿が語られている。その違い自体も、両面宿儺を知るうえで興味深いポイントです。
飛騨に残る両面宿儺の伝説とゆかりの場所

飛騨高山には現在も、両面宿儺にまつわる寺院や像、洞窟などがあります。
ここからは史実として確認された宿儺の行動ではなく、地域に受け継がれてきた伝承として見ていきましょう。
千光寺と両面宿儺
高山市丹生川町にある千光寺(せんこうじ)には、両面宿儺を開山の祖とする伝承があります。
寺の縁起である「千光寺記」には、仁徳天皇の時代に飛騨の豪族・両面宿儺が千光寺を開いたとする内容が伝えられています。
現在も千光寺には両面宿儺に関する信仰や像が伝わっています。また、円空による両面宿儺像でも知られています。
『日本書紀』で討伐される存在として描かれる宿儺が、地域では寺の開祖として伝えられている点は印象的です。
善久寺に残る「両面宿儺出現記」
同じ丹生川町にある善久寺(ぜんきゅうじ)にも、両面宿儺に関する伝承が残っています。
「両面宿儺出現記」では、岩窟から宿儺が姿を現し、仏法を守るためにこの世へ現れたと語られています。
ここでの宿儺は、人々を襲う怪物ではなく、仏法を守護する存在として描かれています。
善久寺には、宿儺が決戦の前に食事をしたと伝わる「御膳石」などの伝承も残っています。
『日本書紀』に描かれた宿儺とは異なる、人々に近い存在として語られていることが分かります。
飛騨大鍾乳洞と両面宿儺伝説
飛騨大鍾乳洞の周辺にも、両面宿儺の伝説があります。
近くの山中には「両面窟(りょうめんくつ)」と呼ばれる場所があり、宿儺が現れ、住んでいたと伝えられています。
飛騨高山の公式観光情報では、江戸時代の地誌『飛州記』にも関連する記述があると紹介されています。
現在、両面窟は落石の危険があるため閉鎖されていますが、こうした場所が現在まで宿儺伝説と結びつけられていることからも、飛騨における両面宿儺が地域文化と深く関わってきたことがうかがえます。
『呪術廻戦』の両面宿儺の元ネタは日本書紀?
『呪術廻戦』の両面宿儺について検索すると、「元ネタは日本書紀なのか」と気になる人も多いでしょう。
確かに、『日本書紀』に宿儺という名前と特徴的な姿が記されていることは確認できます。そして『呪術廻戦』にも同じ「両面宿儺」という名前のキャラクターが登場します。
ただし、「同じ名称が使われていること」と「日本書紀の宿儺がそのまま作品キャラクターの元ネタであること」は分けて考える必要があります。
古典の宿儺と『呪術廻戦』の宿儺
両者には、まず「両面宿儺」という名称の共通性があります。
また、古典・伝承上の宿儺が通常の人間とは異なる姿で描かれていることも、作品との関係を想像したくなる要素の一つでしょう。
しかし、『呪術廻戦』の宿儺には作品独自の世界観、能力、人物設定があります。
そのため、古典や伝承に登場する宿儺と、作品のキャラクターをそのまま同一視することはできません。
「元ネタ」と断定できる?
今回確認したTVアニメ『呪術廻戦』公式サイトでは、作品内の両面宿儺について、千年以上前に生存していた「呪いの王」であることや、虎杖悠仁の体に受肉したことなどが説明されています。
一方、公開されている公式サイトのキャラクター紹介では、「日本書紀の宿儺を直接の元ネタにした」という説明までは確認できません。
集英社の『呪術廻戦 公式ファンブック』には、作者・芥見下々によるキャラクターQ&Aや設定解説などが収録されていることが案内されていますが、今回確認できた集英社の公開情報だけから、日本書紀の宿儺が直接の元ネタだと断定できる情報は確認できませんでした。
そのため、現時点では、
・『日本書紀』にも宿儺という名の存在が登場する
・飛騨地方にも両面宿儺の伝承が残っている
・『呪術廻戦』にも同じ両面宿儺という名のキャラクターが登場する
という確認できる範囲を押さえたうえで、それ以上は断定しないのが適切でしょう。
古典を知ると『呪術廻戦』とは違った面白さが見えてくる
『呪術廻戦』をきっかけに両面宿儺を知った人が、『日本書紀』や飛騨の伝承までたどっていくと、作品とはまた違った宿儺の姿が見えてきます。
特に興味深いのは、「恐ろしい異形の存在」という一面だけではありません。
朝廷側の記録では討伐される存在でありながら、地域では英雄や守護者として伝えられる。寺の開祖や仏法を守る存在として語られる伝承もあります。
一つの名前から、古代の記録、地域伝承、信仰、そして現代の作品文化までつながっていくところに、両面宿儺という存在の奥深さがあります。
まとめ
『呪術廻戦』で広く知られる両面宿儺ですが、その名前をたどると、日本の古典や飛騨地方の伝承へつながります。
・『呪術廻戦』では両面宿儺は「呪いの王」として登場し、虎杖悠仁の体に受肉する
・『日本書紀』には飛騨国の「宿儺」についての記述がある
・日本書紀では二つの顔などを持ち、朝廷に従わない存在として描かれる
・古典への記載だけで、歴史学上の実在が証明されたと断定することはできない
・飛騨地方では、宿儺は英雄・守護者・寺の開祖などとして伝えられている
・作品の宿儺と日本書紀・地域伝承上の宿儺は区別して考える必要がある
・日本書紀が『呪術廻戦』の直接の元ネタだという点は、確認できる公式情報の範囲を超えて断定しない
作品をきっかけに古典や地域伝承を調べてみると、同じ「両面宿儺」という名前の中に、異なる人物像が重なっていることが分かります。
『呪術廻戦』とは切り分けながら日本書紀や飛騨の伝説を知ることで、両面宿儺という名前をさらに多面的に楽しめるのではないでしょうか。
参考資料
TVアニメ『呪術廻戦』公式サイト CHARACTER
国立国会図書館 レファレンス協同データベース「両面宿儺(りょうめんすくな)と高山市国府町との関係について」
飛騨高山旅ガイド「飛騨高山に実在した『両面宿儺(りょうめんすくな)』」
集英社『呪術廻戦 公式ファンブック』
